傘、はじめました。

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その日の仕事が終わり、会社を出ると雨が降っていた。 最近はずっと晴れていたのに、じめじめとしたぬるい風が緩やかに吹いている。 突然の雨でも、この傘があるので大丈夫だった。 ばさっ 「おお」 今日の飛行機は随分低く飛んでいるのか、傘の面積の4分の1ほどを飛行機が占めている状態だった。 そういえば、会社を出た時にたまに見られる本物の飛行機も、こんな風に大きかったっけ… 浮腫みの取れない足で駅に向かって歩き出す。 こんなにはっきり見えるのに、なんで私にしか見えないんだろう。 ぼんやりと考えながら信号を待った。 赤信号の光がなんだか霞んで見える。 そういえば最近視力も落ちてきたような気がする。同僚の言うように、寝れていないんだろうか。 信号が青になった。 大勢の人が歩き出すなか、私も傘で遮られる視界の中を歩き出した。 それにしても、今日の飛行機は本当に低く飛んでいる。 それどころか、だんだんと大きくなっている気さえする。 これなら、搭乗している人も見えるのではないか… ちらりと視線をやった先の飛行機の中で、何かが動いた気がした。 誰かが手を、振っている…? その瞬間、パーーーーーッという大きな音がして、私は身体への衝撃とともに白い光に光に包まれていた。
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