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18時半、あくびをこらえるような仕事が今日も終わり、会社を出て駅に向かう。
いつものように地下へと続く階段を下りながら、ぼんやりと飛行機のことを考える。
というのも、私が勤めている会社から退勤する時、運が良いとたまに頭上を飛行機が通ることがある。
なぜかかなり低く飛んでいて、嫌でも意識してしまうようなサイズで現れるので、私の好みではないのだがないよりはマシ。そう思っていたけど、今日は飛んでなかったな。
階段を下りきったところには、数店のアパレルショップが並んでいた。
普段は入ることがないのだが、最近少し肌寒くなってきたし、そういえばこの間服のプチ断捨離をしたので、秋服のストックがかなり少ないことを思い出した。
「いらっしゃいませ〜、どうぞ、ごゆっくりご覧くださ〜い」
店員さんの高めな声が店内に響く。
客は少なめで、私を含めて3人ほどしかいなかった。
みんな会社帰りなのだろうか。狭い店内を疲れた表情でうろうろと歩いていた。
その中で私も例に漏れず、早めに帰りたい気持ちに後を押され、「ごゆっくりご覧」はあまりできなかった。
服のテイストは先月来た時とすっかり変わってしまっていた。
明るく爽やかな色のアイテムが、暖かく渋いイエローやベージュに変わり、なにより季節を先取っているのだろう、まだ暑くて着れそうもないような、厚めの生地の服が目立っていた。
来週にでも着られるような服を探していた私は、セール品のコーナーに吸い寄せられていた。
セール品ならまだ薄手のものがあるかもしれない。
そう思って近づくと、あるものが目に止まった。
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