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次の週の月曜日、私は半袖のトップスに薄手のカーディガンを羽織っていた。
通販はときめくような服が見当たらず、当分はあるもので過ごすことに決めた。
いつものヒールを履いてマンションのドアを開ける。
「あ」
気がつかなかった。少し薄暗いなとは思っていたが、小雨がちらついている。
雨、嫌だなあ…と思ったところでハッとした。
新しい傘をおろす良い機会じゃないか。
私は買ったまま傘立てに突っ込んでいたクリーム色の傘を抜き出すと、階段を早足で降りる。
かつんっと最後の一段を下りると、傘のボタンに手をかける。
平然を装っているが内心少しだけわくわくしていた。
ふぁさふぁさと傘全体を揺らして形をほどき、弓を射る時の逆再生でもするかのようなポーズで、ゆっくりと傘を開く。
ばさっと音を立てて開いた傘、外の光の中で見るとより少し明るく見えるパステルブルーが視界に広がる。
「やっぱりきれい…」
良い買い物をした。心なしか傘に当たる雨の音もぱたぱたと軽快に感じる。
歩きながら、なんとなくくるくると傘を回してみる。
どこを見ても綺麗な色…
ふと、違和感を感じた。回している傘の内側に、白い何かが横切った気がしたからだ。
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