1人が本棚に入れています
本棚に追加
家に帰ってから、傘をじっくり観察してみることにした。
水気をよく切って、タオルで外側を拭きつつ、自室で開いてみる。
ばさっ
水滴が少し部屋の壁に飛んで、しまった、と思った。
が、それも一瞬だった。
違和感。
飛行機のプリントが、見当たらないのだ。
それどころか、初めて使ったあの日に見つけたシミすら、見当たらない。
傘の内側には一点の曇りもないパステルブルーが広がっていた。
「なんなの…」
とりあえず、まだ湿っているところをタオルで拭いて、床に置いてみる。
ベッドに座り、ぼーっと傘を眺める。
どういうことなんだろう。
日によってプリントされている絵柄が変わる傘。
そんな傘は、見たことがないし聞いたことがない。もしかして、私の知識不足なのか?
ぐるぐると思考がめぐって眠くなってきた時だった。
傘の内側で小さく何かが動いた気がした。
虫か?慌ててティッシュを取ってくる。
虫は苦手、でも一人暮らしだからこういうところ強くならないと…
そう思いながら傘に近づく。右手のティッシュを虫にかぶせようとした時。
これは、虫じゃない。
近くで見てわかった。
驚いてなかなか声が出なかった。
これは、
「鳥…?」
小さな鳥の形をした絵柄が傘の内側で動いている。
飛んでいるのだ、空を。
最初のコメントを投稿しよう!