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「他に何か気になるところはございませんか?」
洲藻が久美に尋ねる。
とても柔らかい物腰だが、その目は真っ直ぐと久美を捉えていた。集中しているのがわかる。
どんな小さな疑問点も拾って売り上げに繋げようとする営業マンの目だった。
「あのー、お部屋も家賃も結構いいんですけど…」
久美が言いにくそうに切り出す。
「はい」
「駐車場がちょっと狭いのが気になるかなあって…」
えへへ、と気まり悪そうに久美が言う。
確かに駐車場は少し狭い。洲藻は営業車を難なく停めていたが、久美は自分が停めるとなるとどうだろう、と思った。
久美は事故は起こしたことはないが、運転も駐車も苦手だった。
「なるほど。確かに狭いかもしれませんね…。どうしても気になるのであれば、隣に月極駐車場があるので、そちらも利用することはできます。月に8,000円かかってしまいますが」
「んー、でもその月極駐車場ってあれでしょう?」
久美は窓から月極駐車場を指さした。久美が指さした駐車場は、洲藻が言ったものだった。
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