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プロローグ
夏の特別番組のテーマソングを、繰り返し聴いていた。家族にうるさいよとよく怒られるくらい、飽きもせずに何度も何度も何度も。オレ達の時はどんな歌だろう。どのアーティストが歌うんだろう。わくわくしてた。
テレビの中の、黒土のグラウンドと緑の芝。
揺れるメガホン。応援がこだまするスタンド。
灼けつく光と影。
旗が、風になびく。
汗と革の匂いが脳裏に蘇る。
空にサイレン。
胸が、熱くなる。
――プレイボール!
力の全てを尽くして、あそこを目指せ!
一昨年は記念の100回大会。
1年生は皆、応援席でメガホンを振り振り、練習した応援を、踊って歌って目一杯叫んだ。1人1人に攻撃の時の曲があって、アレ格好いい!コレ先輩に合ってんな〜、オレは何にしようか、なんてニヤニヤと密かに考えていた。
昨年は101回大会。
俺は控えピッチャーとして登録された。投球練習はするものの、一度も試合で投げることはなかった。先輩たちのほか、同級生2人がレギュラーで出場した。強豪校に当たって地方大会3回戦で敗退した。
そして、オレたちが3年生の2020年、夏。
第102回全国高等学校野球選手権大会は、COVID-19――新型コロナウィルス感染症のため中止になった。
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