幸せな日々

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幸せな日々

ピピピピピピピピ・・・。  目覚まし時計が音を立ててなる。時間を見ると、時計の針は6時を指していた。 「えぇ・・・。もう、6時なの?」  昨日は幼馴染み物の小説に夢中になっていて、夜遅くまで起きていた。  その本は、学校で新しく入荷された本で、男女共に大人気で、昨日、やっと借りれたのだ。  いざ読んでみると、面白くて、夢中になって時間を忘れてしまったのだ。 (やっぱり幼馴染みっていいなぁー)  顔を洗いながら、わたしはそう思ってしまったのだ。  いけない、いけない、わたしにも幼馴染みがいるじゃないか。  超有名人の幼馴染みが。剣道の大会で全国制覇しまくりの天才少年、山崎祐太。その兄の一翔も弓道の大会で優勝している兄弟揃って有名人なのだ。そして、源平合戦で大活躍したあの超絶有名人の源義経。元寇のときの一応歴史の教科書に載っている竹崎季長。  義経の家臣の佐藤兄弟の兄、佐藤継信弟の佐藤忠信。に、伊勢三郎義盛とも親交がある。  彼らはとても頼りになるけれど、わたしのことをからかってるっていうか、女子扱いしてないし。まぁ、自分が男子以上に男勝りだからかもしれないけど。  でも、本当にいつの時代でも、男子って人をからかうのが好きだよなってつくづく思う。  それに比べて奈央と里沙は本当に十四才!?って思うくらい性格も大人びて、何があっても冷静で、本当にすごいし、カッコいいと感じる。  まぁ、祐太も一翔も義経も季長も奈央も里沙も10年以上一緒だし。  祐太なんか赤ちゃんの頃から一緒の一番の理解者でもあるし。  いくら有名人だからって、幼馴染みだから、一緒が当たり前になって、特別感なんて皆無だ。  顔を洗いながらそんなことを考えていると、母親から、 「こら!明日美、いつまで顔を洗っているの!?朝ごはんできたわよ。」  あー。ずっと変な考え事してたから、結構時間がたっている。  すぐに乱れた髪を整えるため、プラスチックの櫛を片手に鏡の前にたつ。  わたしは生まれつき、髪がほんのり銅がかかった淡い茶色だ。  幼馴染みたちはみんな黒髪ストレートなのに・・・。  一人だけ髪色が違いすぎるから、近所のおばさんに、染めてるって噂されてひどい目にあっているし。  肩までの茶髪をコームで解かしていく。髪が整ったら、朝ごはんを食べに台所のテーブルへ向かう。炊きたての白米に、半熟の目玉焼きに、味噌汁にジューシーなウインナー。  今日も美味しそうだ。 「いただきまーす。」  朝ごはんを食べ終わると、歯を磨いて、セーラー服に着替えて準備完了。  余った時間でめざましテレビを見てから、午前7時30分に家を出た。  いつもの通学路を通っていると、後ろから、祐太と一翔に声をかけられた。  祐太は身長が高くて、顔立ちも整っている。その兄、一翔も頭がよく、眼鏡がよく似合うへ偏差値75の高校に通っている。高校二年生だ。 「おっはよー。」 「明日美ちゃん、おはよう。」 「おはよう、祐太、一翔。」  幼馴染みに挨拶を交わし、一緒に並んで歩く。  祐太とは赤ちゃんの頃から一緒の仲良し。  祐太のお兄ちゃん、一翔とは顔見知りだったけど、眼鏡をかけて、勉強ばかりしているから、堅物で取っつきにくいと思っていた。  でも、保育園の頃、思いきって話かけたのが始まりだ。それで今に至っている。  里沙と奈央は保育園のとき、横浜へ引っ越してきて、わたしたちが通う保育園へやって来たのだ。  わたしは大人びた性格の奈央と里沙とすぐに仲良くなった。なぜなら、一緒にいるとすごく安心するからだ。  そして、あれは、三才の頃だった。近所の石碑の前で転んで、平安時代末期にタイムスリップしちゃったのだ。  その時に、幼少時代の義経に出逢ってしまったのだ。あのときは彼にくっついてばっかりで、いつも勉強や武芸の稽古の邪魔をしていたっけ。  次は、四歳の頃、石碑の前で遊んでいたら、鎌倉時代にタイムスリップして、竹崎季長に出逢っちゃって・・・。  どれも唐突な出逢いだ。保育園のわたしに出逢っているから幼馴染みだろう。  よく両親が言っていたっけ。  ー保育園頃に出会った彼ら彼女らは幼馴染みだよー  って。  わたしはそう言われたとき、小学校低学年だったから、幼馴染み?  なにそれ、おいしいの?くらいにしか思ってなかったのだ。  最近は幼馴染みのことばかり気になっている。一体、どうしたのだろう....。  すると、大勢の小学校低学年くらいの男女が、三人の青年を囲んでいた。  どうやら、質問責めにあっているようだ。 「ねぇ、ねぇ、お兄ちゃんたちって時代劇の人?」  それもそのはず。三人の青年の年齢は高校生~大学生くらい。  でも、服装が違いすぎる。三人とも、平安時代末期~鎌倉時代の男性の服装の直垂を着ていたからだ。頭には折烏帽子をかぶっている。  しかも、義経と継信、忠信じゃん。 「あー、そこの坊っちゃんとお嬢ちゃん、そんなに質問責めにしたら、お兄ちゃんたち、困るでしょう?」  うちが小学校低学年の子達に言うと、 「じゃあ、このお兄ちゃんたち誰なの?」  まだ小学校低学年の子達に歴史を教えても、わからないよな。 「小学校六年生になったら学ぶから、そしたら、お兄ちゃんたちが誰か分かるよ。」  そう言って、義経たちの背中を押した。 「そんな所にいたら目立つでしょ?」 「そんなに目立つのか?」  ありゃりゃ、全く分かってないみたいだ。 「だから、あんたたちは、この世界では、すごく目立つの。」 「全く・・・。なんなんだ、あの童子たちは..。」  目立つなんて気にしていないみたい。その服装でうろついたら、みんな驚くに決まってるでしょうに・・・。  源義経。1159年生まれる。誕生日は不明。1189年に衣川の合戦で自ら命をたつ。  彼は今、二十一才。彼はあと八年で死んでしまう。別れるのは嫌だな。  幼馴染みたちには幸せになってほしい。そうやってセンチメンタルな考え事をしていると、 「おい!!なにさっきからなにボケてるんだよ❗」  祐太に声を掛けられて気づいた。 「大丈夫?明日美殿」  忠信にも心配されたし。  こうなってしまったのは、あんたたちのせいだよ。  最近、あんたたちのことばかり考えちゃうんだよ。 「最近、考え事ばかりするんだよ。」 「鈍い明日美殿が考え事したら余計に鈍くなるだろうに。」  義経が余計なことを言う。 「いい加減、運動神経良くないんだから、考え事なんかしてたら、チャリごと川へ落っこちるぞ。」 「祐太もよっちゃん(義経のニックネーム)もさっきからひどいよ。あと、継信君も、忠信君も笑わないでよ❗」  だいたい、あんたたちのせいで、考え事してるって気づいてないくせに。  つーか、うちはからかわれるほど、運動神経悪くないから。そっちが良すぎるだけでしょ。  あと、義経は、女子も羨ましがるくらいの色白だから、うちだって少し嫉妬する。身長はうちよりちょっと低いかな。  体型は、男子としては、華奢な方。キリッとした切れ長の目が特徴。 「あー悪いけど、建物の裏を通って帰ってね。」  自分達は学校へと向かった。  学校へ着いたのは、ギリギリ遅刻じゃない八時半だった。  義経たちと喋りすぎた~!!    学校が終わり、帰ろうとしていると、いない。祐太がいない。  里沙と奈央に、 「祐太は?」 「あっ祐太君なら、おばあちゃんが病院にいって、家には誰もいないって。」  そう。祐太には両親がいない。祐太も一翔もおばあちゃんに育てられたのだ。  義経も父親が殺され、母親とも、幼い頃、別れて、以来、あってないって言う。  季長だって、家が落ちぶれて、竹崎家復興のために頑張らなきゃならない。  一番の幸せものは自分だ。  わたしは、帰るとき、チーズケーキ2つと草餅10個を買った。  勿論、彼らにあげるためだ。わたしの家に居れば、の話だけど。季長もわたしの家にいるのかな?  やがて、家につくと、いつものように、家の扉をあける。 「お帰り~。」  あっ!!しまった!!ただいまを間違えて、お帰りって言ってしまった!!  勿論、お母さん大爆笑。母の笑い声に混じって、少年や青年の笑い声が混じっていることに気づいた。  あっ家に来てたんだな、と思った。母が笑いながら、 「あと、祐太君たち来てるから。」  和室へ行くと、いたいた。  祐太に一翔に義経、継信、忠信、義盛、季長。 「お帰り~とか、相変わらず面白いな。お前。」  和室に入った瞬間、からかわれた。 「はーい。これ、買ってあげたんだから、食べてよね。」  チーズケーキを祐太に、草餅を義経たちにそれぞれつき出す。  母が、ジュースやお茶を持ってくる。 「おいしい?」  チーズケーキや草餅を美味しそうに食べる彼らに聞いた。 「あぁ、うまいよ。ありがとな。」 「うまい!!京にも奥州にもこんなものはないよ。」  素直に喜んでて良かった。 「ねえ、明日美ちゃん、。」 「ん?どうしたの?みんな早速、お腹壊したの?」 「早速って、下剤でも入れたのかよ!?」 「毒でも盛ったのか!?」  んな訳ないでしょ。祐太や季長、考えすぎ。 「まっ明日美が出来るわけないもんな。」 「はっ!?」 「明日美殿は鈍いからすぐに分かる。」 「明日美ちゃんはドジだもんね。」  さっきから失礼なことをばっかり言うよ。祐太に一翔に義経に季長。  しかも、忠信君に継信君に義盛君だって同情しないでよ。  色々とからかわれるけど、こうやって、幼馴染みと笑えるなんて幸せだ。  ずっとこんな風に笑い会えてる未来があればいいのに。 「なぁ、今度の土曜日、俺たちで遊びにいかないか?」 「うん!!いいよ。」 「よっしゃ~決まり~。」 「他の六人もちゃんと来てね。」 「あぁ。」  今週の土曜日が楽しみだ。  でも、楽しみは絶望に変わることを彼ら彼女らは知るはずもなかったのだ。
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