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私は大学在学中にアルバイトをしていた事がきっかけで今の仕事を得た話をした。
「友達がそこでバイトをしていて」
私はバイト先の名前をつげる。
それほど大きくないが老舗のバレエ教室だ。
「ああ知ってるわ、確か薪の原にあるわよね」
薪の原はみつきさんに偶然会った場所でもあった。
「あの頃が懐かしいわ…あなた
友達を待っていたのよね」
「その人に紹介してもらったんです」
「そう」
みつきさんは私を見つめた。
「不躾な質問かもしれないんだけど、今恋人とか、好きな人とかいるの?」
「いえ、今は…」
学生時代は、みつきさん本人には言えなかったし、ファンという立場でしかなかったけどはっきり好きだと言い切れた。
今でもファンですって社交的な感じでさらっとなら言えるかな。
そう難しい。
私は今のみつきさんの活躍を知らなかった、もちろん舞台もみていない。
ネットで追いかけてもそれ程情報はえられないし、何よりそうすることが辛かった。
パリに行ってしまった後にみつきさんの事を聞いたり知ったりした時、直後は気持ちが上向くのだがその後は落ち込む事も多かった。
彼には会えない事を再確認するから。
あれから何年もたった。
そして彼は今はここにいる。
でも今だけ。
また遠くへ行ってしまう。
「何を考えてるの、もしくは誰かのこと?」
みつきさんの声がする。
みつきさんの手が私の両手を掴んだ。
みつきさんは、フランスでどんな風に過ごしていたのだろうか。
フランスのバレエ団に客演で公演した後、そこに正式に入団した。
その後の事で知っているのは踊った演目位だ。
個人的な事はまるで知らない。
恋人の有無どころか結婚してる可能性だってある。
「みつきさんは…」
その時、みやびさんの言葉が頭をよぎった。
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