思いがけない事態

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前にみやびさんに会った時、彼女は私に言った。 「みつきはいつも誰とも真面目なお付き合いはしたくないの」 「あなたは刹那的な関係なんて結べそうにないタイプだし」 「刹那的な関係ってなんですか?」 「体だけの後腐れない関係、ね」 体が強ばるのがわかった。 みつきさんが望むのは簡単な関係。 私の気持ちなんてきっと重すぎるだろう。 結局は、ずっと好きだったんだなんてみつきさんには言えない。 「ごめんなさい、なんでもないです」 「そう…」 みつきさんはため息をついた。でも握られた手は離されない。 その後はしばらく私の事やみづきさんの事を話した。 ロンドンの生活とかバレエの事など。 昔は知らなかったバレエのハードな面をみつきさんは話してくれた。 みつきさんは体と精神はバレエの為に存在している。 すべてベストな状態で踊れるように日々の生活をコントロールしていた。 しかしそれは苦ではない。 小さい頃からずっとそうしていたし、今でもバレエを続けられる事が幸せだからだ。 帰るとき、みつきさんは言った。 「また明日にはパリに戻るんだけど、公演があるから一週間後に一時帰国する予定なの」 みつきさんは私の側に来てしゃがんだ。 私の目を捉えると、まるで子供に言い聞かせるようにゆっくりと話す。 「その時にもこうやって会ってくれないかしら」
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