みつきさんとの日々

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みつきさんとの日々

みつきさんは一週間後に帰国すると早速リハーサルが始まった。 みつきさんは毎日のように劇場にやって来た。 来る時間も帰る時間もまちまちだったが、みつきさんはいつも事務所に顔を出してくれた。 事務所の同僚はみつきさんの来る事に最初はびっくりしていたが、昔からの知り合いなのだという説明とみつきさんのフランクな人柄に魅了されて何も言われなくなった。 言われなくなった、というよりも今は当たり前のように挨拶して話している。 みつきさんは最初ホテル住まいだったが生活に不便だからと練習場や劇場にほど近い宿舎に移った。 一緒に公演するダンサーもそこに住んでいる。 その生活が楽しいらしい。 「パリではみんな独立した考え方を持っているしバラバラに住んでいたから今はすごく新鮮だわ」 キッチンとリビング、洗濯場が共有。 食事も、といっても体に重くない簡単なものだが毎日自炊しているらしい。 そして同じ宿舎に住む人達と会話をしながら食事をする。 そういう誰かと一緒に生活出来る事が最近はホッとするのだという。 宿舎には何度か遊びに行った。 宿舎のリビングはスタジオもかねていて広いフローリングに簡易なテーブルとソファが端の方に寄せられて置いてある。 遊びに行くとそこに招かれるのだが、みつきさんは私のメイクが気になるようで時々メイク道具を取り出して私の顔に手をかけていた。 「このアイシャドウはあなたの肌に合わないわよ」 前にそうしていたようにみつきさんは自分の隣をぽんぽんと叩く。 私は自然とそこに座った。 前はよくそうやって髪を結んだり、メイクをしたり服装を整えたりしてくれたからだ。 でも、考えてみるとここは劇場の所有している場所で、私の職場と関係も深い。 人の目だってある。 始めはそう思っていた。 だがここに住んでいる人達はそういう事が誰も気にならないのか、男女問わずメイク中でも何もないように挨拶をされる。 下手をすると側に来て観察したりアドバイスしあったりしている。 考えてみるとここにいるのはダンサーで美意識の塊のような人達なのだ。 そういう人達からみれば人前でメイクをしたり服装を整えたりするのは普通の感覚らしかった。
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