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番外編 みつきと武志
客演の為に再来日してから武志に会えたのは3日目の夜だった。
劇場近くのレストラン。
元々ダンサーだった人が経営しているからそういう関係の客層が多い店だ。
メニューも公演前にピッタリの軽めの食事にアレンジしてくれる。
武志とはみやびの結婚式でも会った。
みやびの花嫁姿はとても綺麗だった。
白くて長いウェディングドレスはレースがたっぷり使われているのに凄くタイトなシルエットでみやびのスタイルを活かしたデザインだ。
よく似合っている。
花婿さんは幸せだね、と褒めたつもりなのに
みやびには
「もう!私、どうしてこんなつれない男がずっと好きだったのかしら」
と言われながら、バンバンと背中をたたかれた。
「今までありがとう、みやび」
みやびは一瞬、顔をクシャッとさせ唇を噛みしめた。すぐに笑顔に戻した。
みやびの結婚相手はかなり大物の息子だときく。
みやびは社交的だし、しっかりしているからうまくやっていくんだろう。
日本に帰って来るとホッとする。仲間がいて、家族がいて。
アイデンティティの問題で悩む事も少ない。
大分と慣れている筈でもロンドンでは一人でいる事にホッとしていたのに。
「綺麗だったな、みやび」
武志に言うと本物の女王様みたいだった、と笑った。
小さい頃からの彼女のあだ名だ。
「みやびのお前への片思いも終了だな」
「みやびは色んな事から守ってくれただけよ」
「またそんな事言って…みやびの最後の悪あがき聞いたらそうは言えなくなるぞ」
「何?悪あがきって」
「あいつさあ、可愛子ちゃんと久々に再会した時、お前が女とは体の関係しか求めない男だって言ったんだよ。
「…みやびぃ」
「でも過去のお前見てたらあながち間違ってはいないから否定するのもなあって感じでさ…パリではどうだったんだよ」
「全く無い事はなかったんだけど」
「ほらみろ」
「一度試したけどそれっきりだったの
ロンドンで全然そんな気持ちにならなかったから
誘惑もあったんだけど
あんまりそういう欲がでなくて
美味しそうじゃなきゃ食べたくないでしょ」
「まあなあ」
武志はワインを飲んだ。
「そういえばこのレストランだったよ、可愛子ちゃんに会ったの」
「ああ、そうだったわね、そうね、彼女今そこの劇団で働いてるから」
「えっあっ、だから会えたんだ、そうか」
「会えて良かった、本当にそう思うわ」
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