みつきさんの思惑

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みつきさんの思惑

舞台稽古が始まるとみつきさんの生活はかなり不規則になった。 朝から夜まで通常の稽古の他にも個人練習や宣伝活動もしている。 時間の制約はかなりあるし考えてみれば大変そうなのだけど 、そんな事を感じさせない位みつきさんはかなり自由な人だった。 私の勤務時間に事務所に顔を出す時は私のお茶やお菓子やお弁当の中身をつまんで帰っていく。 つまむものによって好き嫌いをいうからみつきさん好みのものを用意するようになった。お茶も全部飲まれるのがイヤなので別に水筒を用意した。 「私、ツナより梅のおにぎりが好き」 「このスモークチーズここに置いておいていい?自分で持っているとついつい食べ過ぎちゃうのよね」 時にはニコニコしながら私の隣の席に座って休憩がてら遊んでいく。 2、3分なのだがそれでも毎日楽しかった。 公演初日の何日前だっただろうか、夜に打ち合わせがあるのだがそれまで時間が空いたから出掛けないか、と誘われた。 買い出しにでも行くのかと思っていたら連れて行かれたのはホテルのバーラウンジだった。 対談がこのホテルであるし、まだ夜には時間もあるから人も少ないから話しやすいでしょう、とみつきさんはニッコリと笑った。 「公演が終わった時はパリの次の公演はスケジュールが合わなくてね、すぐにパリには戻らなくても良いの、それで日本で休暇を取ろうとおもうのだけれど」 大きなガラス窓の外は、オレンジ色の空が暗い闇の中に溶け入る瞬間を描いていた。 決して明るいとは言えないバーのシャンデリアがまわりを少しづつ輝かせる。 「その間ずっと一緒にいられないかしら」
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