40人が本棚に入れています
本棚に追加
可愛子ちゃんとの関係は?
私はバレエダンサーのみつきさんに恋をしている。
いや、世間的にはそんな大事ではない。
私彼の1ファンに過ぎない。
時々、彼に関する情報を集めて追いかけているだけ。
彼は美しくて、オーラがあって、時々優しくて、でも俺様で。
そして、会えば話しかけてくれる。
「あら、可愛子ちゃん、相変わらずメイクが下手ね」
なんてオネエ口調で辛辣な言葉ばかりなんだけど。
でも、そう言いながらもメイクを直したり、髪を整えたりしてくれたり、時にはハグをしたりする。
だから嫌がられてないって思ってた。
彼のバレエ仲間から嫌がらせを受けるまでは。
あの日からショックでしばらくは何も考えられなかったが、
足首の捻挫が完治し、気持ちが落ち着いたら、やっぱりみつきさんに会いたいと思うようになった。
そのくせ、あの出来事がトラウマにもなっていて会いにいく勇気が出ない。
みつきさんに会いたい気持ちは積もるばかりだ
ついネットでみつきさんの事をググってみるがそれにも限界があった。
こんなに執拗に彼の事を調べたりして、このままじゃ自分がストーカーになっていくのではないか、と怖くなり始めた。
そんな気持ちを断ち切ろうと家にスマホを置いたまま、大学へ通う様にした。空いている時間は出来るだけ図書館で勉強する様にしたし、誘われたら積極的に出かける様にもなった。
図書館で息抜きに何か本を読もうかと棚の間をふらふらしていたら普段かはあまりみないスポーツや芸術のコーナーに来ていた。
今度、授業でバスケをやるんだっけなあ、と思っていたら、その向こうにバレエのコーナーがあった。
バレエのコーナーには数冊しか本はなかった。その中から一冊取り出してペラペラとページをめくると彼の踊った演目についての解説が、目についた。読んでいると彼の踊る姿を思い出し、更に深くダンスの内容を深く理解できた気がした。
気がついたら夢中になって読んでいた。
続きは家で読もうと、そのままその本を借りた。
それがきっかけとなり、図書館に置いてあったバレエの基礎知識本や、初心者向けバレエレッスンの本など、バレエと名の付くものは何でも読むようになった。読んでいる間は彼の世界が垣間見る事が出来る。バレエの教本ですらまるでお気に入りのアイドルのファンブックに見えた。
そんな日々が続いていた時だった。
授業の空き時間にカフェテリアで友達と合流しお茶を飲んでいた。
よく同じクラスになる受けていた男の子に声をかけられた。
「ゆうきちゃんってバレエやってるの?」
突然、男性に名前を名字で呼ばれなかった事に一瞬戸惑った。
振り返るとよく友達がよく話してる男の子だ。
女友達からは名前でしか呼ばれていなかったから彼は私の名字は知らないのだろう、そう納得した。
考えたら私も彼の名字をしらない。
「うーん、やってはないんだけど、観るのが楽しいっていうか…」
私は彼を見た。
「でもそれ、初級レッスンの本だよ」
彼が見たのは手に持っていた本だった。
人にバレエの事を聞かれるといろんな事を思い出してうまく考えがまとまらなくなる。
「だって、ほら、うちの学校種類あんまりないし」
「うーん、まあうちにはそういう学部ないからね、じゃあ本屋に行けばいいじゃん、ここよりはあるんじゃない?」
ああそうか、なんで気が付かなかったんだろう。
もっとたくさんあるし今の情報もたくさん載っているだろう。
みつきさんの顔が浮かんで心が跳ねた。
「まあ、こういう専門のあるところは限られてるけどね」
彼はにっこり笑って言った。
「帰り、バレエ関係の本がたくさんあるとこ、連れていってあげるよ」
最初のコメントを投稿しよう!