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「着いた」
通せん坊をしている大樹の後ろに、それはあった。
森をくりぬいたような奇妙な空間で、生い茂っていた草木はなく大地がいたるところで裂けている。地面からせり上がった色違いのブロックを何個も重ねたような地層が、大蛇のように横たわっていて、それはところどころで曲がり、うねり、空を向いたり地面にめり込んだりしながら、いくら言葉を尽くしても足りないくらいの色と輝きを伴っていた。
「……なんですか、これは……」
スピネルは圧倒されながらもその大蛇に近づくと、ひとつの紅い石をとる。彼の髪の毛と同じ色が、四方八方に光を反射させている。
「とっておきの場所なの」
「……ここも……特殊な力を持つ石の宝石箱だったんですね。この量と質……世界なんてひと捻りです」
「……あのね、スピネル。記憶の石を知ったときね、お父さんとお母さんの記憶を探そうとしたの。だから売り物にしたくなかったの。それに綺麗な石も、わたしの目を売るようで、それが嫌だったの」
「それは……」
「でもいまは違うよ。スピネルのお説教を聞いていたらどうでもよくなった」
目の前の煌めきを見渡しながらそう言い、スピネルは苦笑した。
「あ、」スピネルが声をあげた。「この汚い金色の石」
「どうかしたの?」
「これはなかでも貴重なんです」
「どういうふうに?」
訊かれて、いたずらっぽく紅い目をゆがませる。
「ちょっとラズリ、こっちにきてぼくの手を握ってください」
首を傾げながら不安定な足下を転ばないようにゆっくりと歩いて、差し出された両手を握った。
重ね合わせた手にはくすんだ金色の石が握られている。
「手を離さないでくださいね」
「……うん!」
次の瞬間、二人は空を飛んだ。
二人はぐんぐん広がる世界に、様々な色をみた。
ラズリは猫が驚いたように綺麗な二つの目を見開いて、それを見た隣のスピネルが微笑んだ。
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