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ザァッ……
静な星の中心で柔らかな葉擦り音が響き渡る。
風に運ばれた葉が一人一人に届けられ、手の中で手紙に変わる。
皆、静かにそれを読み、空を見上げた。
『ーーー終焉準備、始めました。』
それは、この星自身からの言葉だった。
「…ついに来たか…。」
一人の男が呟いた。
「あぁ…しかし、よく頑張ってくれたよ。本当ならとっくに滅びてたはずなんだ、俺達は。この星がずっと護ってくれたおかげで今日があるんだ。そして未来も。」
隣にいた男がしみじみと応える。
「そうだな…。」
「それに、ちゃんと皆に知らせてくれて、先を選ばせてくれる。こんな星、なかなかないらしいぜ。」
周りで人々の様々な声が行き交う。
「ーーーさて、どうする?」
「僕は友星の何処かに移るよ。此処とあまり変わらない環境らしいし。」
「だよな、やっぱ安心できる所が一番だよな。」
「この星の近くなら地球もあるけど。」
「ーーーいや、やめとけ。あの星は人間同士の争いが酷いうえに、地球と人間も対立してんだ。俺達が住むには厳しすぎる。」
「そうなのか…とっくに終わったと思ってたのにな…。」
「君はどうするんだ?」
「私はこの星に残って一緒に最期を迎えるよ。私はこの星が好きだからね。」
「そっか、それもいいかもな。」
風に乗って彼らの言葉が私に届けられて来る。
多くが 『ありがとう』 と言う暖かなものだった。
有り難いことに、誰一人私を責めることなくその決断と現実を受け入れくれた。
私は、恵まれていたと思う。
この星の人間は、皆、心優しかった。
大きな争いもなく此処まで永く存在できたのは彼らのお陰でもある。
何処かの星が言っていた。
静な最期を迎えられる星はごく僅かなのだと。
…最期まで、何が起こるかは私にもわからない。
近くに星は幾つもある。
だが、出来うる限り私は君達の未来を護ろう。
優しい心達が選んで行く、
様々な、幸せのために。
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