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僕の誕生日、始まりの日
今日、僕は28歳になった社会人6年目。会社と家を往復する生活に慣れ、家事もちょっとずつまともにできるようになってきた。最近では、休みの日に料理を趣味で作って楽しんでいたりする。
ピコンッ
『誕生日おめでとう』
絵文字もなく儀礼的な文面。缶ビールを飲みながら片手で
『ありがとう!』
と今のテンションとは真逆の返信をする。僕は、今年の誕生日を1人で過ごしていた。ちゃちゃっと作ったキムチチャーハンをテレビを見ながら食べる。多分地元の友達たちは僕がこっちでこんなに寂しい誕生日を迎えているとは思いもしないだろう。まあ、でも別に今の生活が心地良くて気にいっているのは僕なんだから。
『やめろぉぉぉ!』
テレビでは、ドラマがクライマックスを迎えたようだ。さあ、僕もそろそろ寝ないとな、と体を起こした。
「おどーさぁーん”」
立ち上がったとき、幼い子が奥にある寝室から出てきた。涙目で必死に走ってくるので慌てて抱き寄せる。
「どうした、叶音。」
叶音は、しばらく俺の腕の中で声を詰まらせていたが、どうやら怖い夢を見たらしかった。
「大丈夫。もうお父さんも寝るから。一緒に寝ような?」
叶音を下ろして歯磨きをしに行こうとするものの叶音は、ずっと僕についてくる。僕の服の裾をギュッと握って、涙目で。本当の子では、ないのに僕はこの叶音のために生きているも同然だった。歯磨きをして、僕は叶音と一緒に寝室に行く。
「叶音、ほらちゃんとお布団に入って。」
叶音は、不安そうにしながらも素直に布団の中に収まる。
パチッ
電気を消して僕も叶音の横に滑り込む。
「お父さんっ」
叶音は、暗いのが怖いのかすぐに僕の腕にくっついてくる。抱き締めるとまだ、壊れてしまいそうなほど小さい。
「大丈夫。何があってもおとーさんが叶音を守るから。」
ぽんぽんと、軽く背中を叩くと叶音は、ほっとしたようにすっと眠っていった。叶音は、僕が24の時に生まれた子だ。実の兄の子で、父も母も他界しているため僕が引き取った。正式に養子になったのはつい昨日のことだ。今日は叶音が、本当の僕の子になって初めての夜だ。
女の子だから子育ては苦労するだろう。でも、僕はこの子のためならなんだってやり遂げられると思う。
今日、僕は兄の子を育て始めました。
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