殺し屋、はじめました

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だってそろそろ今の仕事にも嫌気がさしてたし。転職活動もはじめないとなーとかぼんやり思ってたし。でもこの厳しいご時世、すぐに次の職なんて見つからないじゃない? そこにきての殺し屋ですよ。 いやまさに天から降ってきた名案。今月一冴えてたかもしれないね。 思考が一気にクリアになった気がしたよ。 転職もできて、目の前の上司もぶっ殺せる。まさに一石二鳥の万々歳。 これ以上の発想があるだろうか。いーやないね、とりあえず来月までは。 そっからの俺はまさに有言実行。 翌日には上司に辞表をたたきつけてやったよ。いつも鬼の形相みたいにしてるクソ上司が、目を点にしてこっちを見てたのは最高に爽快な場面だったね。 覚悟しとけよ、次会う時があんたの死ぬ時だ。 そんなこと思いながら颯爽と翻ってオフィスを出ようとしたら、上司に呼び止められちまった。 「やめるなら引継ぎ済ませてからにしろ」 驚いたね。今度はこっちが目を点にして上司の顔を見ることになった。 クソ上司の顔はいたって真面目で、さっきの言葉が冗談じゃないことが分かったよ。 まあ、言われてみれば確かにその通りだ。辞めるなら辞めるで、今俺が持ってる仕事は別の誰かに引き継がなきゃいけない。人手のないウチの会社ならひとまず直属の上司になるだろう。 つまるところ目の前のクソ上司だ。俺が殺す予定の。 かくして俺は転職前に俺が後日殺害予定の上司に、俺の仕事を引き継ぐ羽目になった。字に起こしてみるとホントに間抜けな話だよな。まさかこんなことろで二の足を踏むことになるとは。
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