殺し屋、はじめました

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だが俺もこの道5年の社会人のはしくれ。引継ぎ作業の大切さはよく心得ている。こうした地道なバトンタッチが会社を、ひいては社会経済を回していくんだろうさ。 そんな気概でもって、俺はなんとかその無意味な業務を乗り切った。 すべては憎きこの上司を葬るため。今は一時の我慢だ。 そんなカンジで一週間くらいで引継ぎを終わらせた俺は、晴れて会社を辞めることができた。いやホント苦行だったよ。いったい何度「いやでもあんたどうせ死ぬじゃん」って言いそうになったことか。 そしてその日の翌日、俺はいよいよと上司殺害を決意した。休職期間なんて必要ない。善は急げってやつさ。 記念すべき殺し屋稼業の初仕事だ。決行は明日の夕方、ヤツが帰社する定時のタイミング。さすがの俺もその日の晩は高揚して眠れなかったね。 仕方ないから殺し屋稼業について色々調べることにしたよ。 けれどネットの海を漁ってみてもそれらしき情報はほとんどなし。あるのは小説の登場人物やら歴史上の殺人者やらばっかり。 もっとこう、今注目のイケてる殺し屋大特集とかないもんかと。ジャックザリッパーとかじゃなくてさ。 そもそも考えてみれば、殺し屋ってどうやったらなれるんだ?関係する資格はあっただろうか?役所に届け出は?年末調整どのように? わからないことだらけの俺は、とりあえず殺し屋稼業を始める旨を宣伝するビラを製作することにしたんだ。会社員時代の資料作成技術がこんなところで活かされると思ってもみなかったよ。 だが世はネットワーク社会、いずれはウェブサイトも設立していかねばならないだろう。 サイト名は殺し屋ドットコムが良いだろうか。 なんてことをウキウキ考えたら寝落ちしちゃってさ、気が付くともう翌日で陽が傾きはじめてたよ。
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