はじめました課

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 今度も落ちた。あまねく落ちた。  仕事探し2ヶ月にして正社員45回、バイト131回。就職より芸人を目指せと言いたくなる、見事なオチっぷりである。 「うえーん!離婚早まったよー!考えたら私以外に3人と重婚して、さらに6股かけてたっていう程度のこと、ちょっとした個性よね。ああ、お金の心配だけはなかったのに…」  離婚でド貧乏に転落。就活は全滅と、諸々落ちすぎで正義を見失っている様子だ。彼女は「美人だが内部仕様的におっさん」、つまり「インナーおっさんアラサー残念美女」なのだが、このままでは正真正銘のおっさんに堕する日も近いと思われた。  ハロワ帰りの電車内、網棚からパクった夕刊紙を読み倒す(日課)。こよなく愛するエロページで(モノクロ印刷が逆にたまらんらしい)、ロリ系美少女のウフフな性活を堪能するうち、ページ下の求人広告に目が止まった。  風俗の募集と金貸しの広告が9割。通常スルーだがどちらも今の彼女には切実だ。彼女はとうとう、スーパーウルトラソウルインテグラルハード系ヘルス「竿白白(サオパイパイ)」のキャスト募集・日給3万円保証(嘘)…  …の隣で悪目立ちしている、エグい広告に釘付けになった。 PIKUPIKUにおこす時、それは今 〜「地域おこし協力隊」絶賛募集中!〜 ()(いち)()(わり)市  すんごい筆文字のアホらしいキャッチコピーのバックに、アホほどマッチョな男の上半身が完璧な「サイドチェスト」ポーズで写っている。暑苦しい。しかしそのチープでクソださいデザインが、金銭のない彼女の琴線に触れた。 「協力隊かあ。仕事はキツイけど生活の心配はないって聞いたな。アパートは月末に叩き出されるし…イイかも」
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