誰にしようかな?

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誰にしようかな?

 息子たちの父親は50歳ということだったが、若々しく、どの息子より整った容姿の持ち主だった。かつて水泳でオリンピックを目指した彼は現在、某有名企業で水泳のコーチをしているという。  若くはないが彼の血も美味そうである。私は彼の話を聞きながら、頭の中では密かに、彼らのうちの誰の血をいただこうかと思いを巡らせていた。  テキストに従うなら『自らの血管を切り裂き大出血させながら、新鮮な血液を猛スピードで吸う』ことによって全身の血液を入れ替えるのが最適な方法とされている。  『正しく素早く全身の血液を入れ替える 強行採血テクニック読本』は、そのコトを成功させるための詳細なテクニックが記されているテキストである。  若い男の血は確かに美味そうな匂いがする。隣に座っているゴローなどは、もうプンプンといい匂いがして、うっかりすると今にもカブリつきたい衝動にかられる。だが、まだ若い。かわいそうである。この際、若くはないが一番長く生きた父親の血をいただくのが、せめてもの優しさではないのか。いや、そうは言っても彼はまだ一家の大黒柱。中をとって、イチローあたりが手頃なところかもしれない。  ヨリドリミドリ、大勢の美味そうな男たちが揃っているのだ。慌てることもない。少し冷静に様子をみよう。
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