柊先生の夏

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 俺がすいかを一口噛りかけたとき、 「ああ!」  と、突然慶太が叫んだのでびっくりした。何事かと思ったら、 「柊先生って、赤色見えないんじゃなかった?」  と聞いてきた。 「ああ、たしかに赤色はよくわからないけど」  俺は色盲で、赤と緑の区別が曖昧だ。すいかも「赤い」らしいが、緑っぽい食べ物に見える。 「そっか……」  慶太は急にしゅんとした顔をした。 「気にするなって。これ、冷たくておいしいぞ」  実際に俺は気にしていなかった。冷たい果肉が口に入っただけで満足だった。 「うん……あ、柊先生」 「なんだ」 「今日の教室でさ、ここで使う看板書いていい?」 「看板?」 「うん。『冷やしすいかはじめました』って書いて、ここに貼っとくんだ」  慶太はダンボールでできた屋台の屋根を指差した。 「ああ、いいぞ。コンクールに出す作品書いてからな。その後なら、好きなだけ書いていいから」 「うん!」  慶太は元通り元気に返事をした。 「もう少しで教室始まるから、遅れるなよ」 「はーい」  俺は教室の準備のため、慶太より先に公民館に入る。俺が準備をしていると、子供たちがわあわあ騒いでいるような声が聞こえた。どうも慶太の屋台は繁盛しているようだった。
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