15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
俺がすいかを一口噛りかけたとき、
「ああ!」
と、突然慶太が叫んだのでびっくりした。何事かと思ったら、
「柊先生って、赤色見えないんじゃなかった?」
と聞いてきた。
「ああ、たしかに赤色はよくわからないけど」
俺は色盲で、赤と緑の区別が曖昧だ。すいかも「赤い」らしいが、緑っぽい食べ物に見える。
「そっか……」
慶太は急にしゅんとした顔をした。
「気にするなって。これ、冷たくておいしいぞ」
実際に俺は気にしていなかった。冷たい果肉が口に入っただけで満足だった。
「うん……あ、柊先生」
「なんだ」
「今日の教室でさ、ここで使う看板書いていい?」
「看板?」
「うん。『冷やしすいかはじめました』って書いて、ここに貼っとくんだ」
慶太はダンボールでできた屋台の屋根を指差した。
「ああ、いいぞ。コンクールに出す作品書いてからな。その後なら、好きなだけ書いていいから」
「うん!」
慶太は元通り元気に返事をした。
「もう少しで教室始まるから、遅れるなよ」
「はーい」
俺は教室の準備のため、慶太より先に公民館に入る。俺が準備をしていると、子供たちがわあわあ騒いでいるような声が聞こえた。どうも慶太の屋台は繁盛しているようだった。
最初のコメントを投稿しよう!