柊先生の夏

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 早足で十分ほど歩くと、白い壁の四角い建物が見えてきた。書道教室をやっている公民館だ。建物に近づくと、いつもと違う光景が目に入った。  公民館の入口に、屋台があった。屋台と言っても祭りの屋台のような、しっかりしたテントではなくて、ダンボールだった。細長いダンボールの箱の上に何か置いてある。ダンボールの箱の上には、同じようにダンボールで出来た日よけまでついていて、一応屋台の形になっていた。その屋台には子供が立っている。その子供は俺が書道教室で教えている、慶太という子だった。どうやら何か売っているらしい。  慶太に訝しげに近づくと、 「柊先生! おはよう!」  と慶太が元気よく話しかけてきた。慶太は書道教室に来ている子の中でも一際元気な子だ。坊主頭で、わかりやすいやんちゃ小僧だった。  書道教室でも、すぐ書くのに飽きて歩き回ったり、横の子と話し出したりする。俺の教室は簡単な習い事の範疇なので、それでも別にいいのだが。
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