柊先生の夏

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 慶太はここでなにをしているんだ、という言葉が俺の口から出るより先に、慶太がしゃべりだした。 「柊先生、らっしゃい!『冷やしすいか』だよ! 今日うちで採れたばかりでおいしいよ! 冷たいよ!」  なるほど、ダンボールの上にはバケツがあって、その中に大きなすいかが丸々一個入っていた。すいかは氷水につけられ、とても冷たそうだ。よくダンボールが崩れないなと思ったが、ダンボールの下には木製の机が置いてあるようだ。 「ここで商売しているのか」  俺が漸く言葉を引っ張り出すと、 「うん、このすいかを売ってきたら、売上分は丸々俺の小遣いにしていいって。あ、公民館の人にはちゃんと許可もらったよ」  こんなところで商売しているのは初めて見た。公民館の人も、子供のやることだからと多目に見たのだろう。 「そうか。ちょうど歩いて来て暑いし、先生に売ってくれ」 「あいよ! まいどあり!」  慶太は元気よく返事をすると、バケツからひょいとすいかを取り出して、大きな包丁で勢いよく半分に切った。 「お前、力あるなあ」  俺が感心して見ていると、 「このぐらい簡単だよ!」  と言いながら上手いことすいかを細い三角形になるまで切って、その一切れに割り箸を刺した。 「お待ち! 柊先生は大人だから二百円……なんだけど今日は特別価格! 百五十円です!」  と言って冷やしすいかを俺に差し出した。  しっかりしているなあと感心しつつ、百五十円慶太に渡した。
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