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夜の学校に忍び込んだ記憶
ここは、校舎、だろうか
足を踏め出せば軋む床、窓は見渡す限り閉まっていてガタガタと震えている
そのせいか、灯りのない校舎の中は思っていたよりは騒がしい
にしても、テストの答案を盗みに行く人って本当にいるんだ
今では見ることのできないような古い校舎を見渡そうとするが、見ている景色は記憶なので、初恋の成就と同じく、なすがままにしかならない
二階の職員室へ向かう為に階段を上っている時の事だった
「まって」
背後から、か弱い声でそう聞こえた
ゆっくりと振り返る
そこには、元クラスメイトの少女が立っていた。1週間前に亡くなった少女が、
「久しぶりだね、一緒に遊ぼうよ
ずっと1人で寂しかったんだ」
少女は話終わると、原型を留めていない顔に満面の笑みを浮かべて、こちらへ向かって走ってくる
「く、くるなあー!」
僕は全力で走った
古い校舎の中に、僕が走る足音と荒い呼吸の音だけが追加される
体力がもたない、このままでは追いつかれる
部屋に隠れようとするが、
ガタッガタガタっ
ダメだ閉まっている
何回目かの確認で、扉が開いた
そこは僕の教室、そして彼女が先週まで毎日授業を受けていた教室でもある
僕は掃除用具入れの中に隠れてジッと息を潜める
来るな来るな来るな来るな来るな来るな来るな
しばらく時間が経ったが、足音ひとつ聞こえない。
逃げ切れた?
掃除用具入れから出ると
「みぃーつけた!」
少女が目の前に立っていた
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