七つの子

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. 〜〜〜〜〜  夕食をかたずけ、菜々が脱ぎ散らかした衣類をしまいながら、あの子が産まれてから七年間の事を、ずっと思い返していた。  産まれた日の事。初めてママと呼んでくれた日の事。平均より遅いながらも、やっとよちよち歩きが出来た日の事。  そしてシングルマザーとなってから、常にわたしに寄り添い、乾いた心を潤してくれた日々。  もしもあの子がいなかったなら、今頃わたしはどうなっていたんだろう。  あの子の助けなしに、まともに生きられなかったのは、もしかしたらわたしのほうだったかもしれない。  たとえ普通の事が普通にできなくても、菜々にしか出来ないとても大きな事を、わたしは既にしてもらっていたのかもしれない。 「ねえママァ、今日もお歌の時間だよぉーっ!」  走り寄ってきた菜々の手には、『日本の童謡』と書かれた小さな絵本が握られていた。保田先生に勧められてから、わたしはこの絵本を購入し、毎日一曲ずつ一緒に歌を歌っている。 「そうだね、お歌の時間だよね。 昨日はメダカの学校だったから……」 「今日はこれ、『七つの子』だって! 菜々も七才だから、菜々と一緒の子だねっ!」  本当は七才じゃなくて、七羽の子鴉という意味だけど、菜々がそう言うなら、なんだか本当にそうなんじゃないかと思えてくる。それが彼女の受け取り方なのなら、きっとそれもまた正解なんだって。 「じゃあさ、菜々さ、このお歌知らないからさ、最初にママが歌ってよ」 「うん、いいよ。 ゆっくり歌うから、よおく聞いて覚えてね」  何気ないいつもの日常風景は、決して当たり前のことではなく。  目の前で瞳を輝かせる我が子は、決して偶然ではなく。  菜々は、菜々。それで良いのだと自分に言い聞かせながら、絵本を手に取る。  今、わたしがこの子のためにしてあげられることの一つに、目一杯の感謝を込めて、ゆっくりと深呼吸し、歌い始めた。 .
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