それが私達の「どんでん返し」

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 冷たく返す私の言葉に、「そっか」とだけ答え、彼が書類――離婚届と諸々の書面に目を落とす。  私と彼の離婚は、もう決定事項なのだ。覆らない。「どんでん返し」はあり得ない。  そもそも、お互いの人生を取り戻す為の離婚なのだ。ここで「どんでん返し」が起こってしまっては、私達はまたお互いに傷付けあい擦り減っていくだけの生活に戻ってしまう。  ――それに、だ。  「どんでん返し」が元々、場面転換の為のものだというのなら、離婚こそが私達にとっての「どんでん返し」なのではないだろうか?  お互いに、新しい人生を迎える為に必要な舞台装置なのだ。きっと。 (了)
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