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「おー、これが都会の高等学校……っ!!
よかったね、私が隣にいなければ、あなた完全に不審者」
「うるせぇ、目立つからしゃべんな偽善者」
俺がなんとか調べあげた、アイツの娘の高校の校門の前に立って下校時間を待つ。
「なかなかに見つけるの苦労したんだが?これ、本当に意味あんのかよ」
「まぁた、そうやってすぐ疑う……っ!
よっ!疑心暗鬼日本一!!」
まぁ、見てなさいってー
そう言いつつ、目当ての人物が見つかったのか、学校の中に衝動のまま入っていこうとするのを首根っこを掴んで何とか止める。
"人を信じることに疲れた"
あの時そう言われ、ぎくりとした自分に驚いた。
その後に続けられた、
ーー私が偽善者って言うのなら、あなたは臆病者だね。
という言葉とともに、忘れようとしても頭からずっとずっと張り付けられたように何度も思い出してしまう。
「……トリくん?どうしたの?
ほら、前原さんの娘さんの雫ちゃん。探偵なんだから一緒に話し聞こうよ」
手を引かれ、おずおずとした動きで頭を下げる女子高校生に軽く紹介をして、近くにあったベンチに腰掛けるよう促した。少女はやはり、なんか居心地悪そうな動作で座った。
まぁ、こんな探偵とか名乗る大人の男女2人に囲まれたら居づらいよな。
「でさ、そこにいる男の人、無駄な時間が嫌いみたいだから本題いきなり入るけど、
お父さん、浮気してるように見える?」
は……?繊細な時期を送ってる女子高生に、そんな不躾に質問する奴があるか。しかも俺のせいにしやがった。
確かに無駄な時間は嫌いだとは言ったが…っ!
驚きのあまり、慌てふためいている女子高生に思わず同情する。
「……え?
えーっと、そんな、風には……、ないように、見えます、けど」
「だよね!ごめんごめん、忘れて!!」
彼女はそう言いつつ、女子高生には見えないよう後ろに隠した両手で、何やらチケットのようなものを創り出した。
あぁ、"あの力"か……
右手でチケットを持って、だらりと力の抜けたような左肩から下の関節を見て確信を持つ。
「はい、これお詫びにあげる。次の週末にでも暇だったら家族で行っておいで」
「温泉旅館の、宿泊招待券……?」
「そ!
そうだなー、そこの商店街の抽選ででも当たったことにしておいてよ」
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