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「生徒に対してこんなこと思うなんて、教師失格だよね…だから、教員になることを諦めたんだ」
「…」
「…ね?嫌いになったでしょ?」
「…」
「俺はね、君の弟くんを殺した人が好きだったんだよ」
「…」
だからか、俺が家行かなくても前みたいに大学に来なかったの。
「黙っててごめん。もう、会わない方がいい、よね…。」
純は立って、俺から離れようとする。
俺は驚いていた。
だって、綾瀬の名前を聞いても別に憎しみは湧いてこなかったんだ。
ただ。
「…むかつく」
俺は純の腕を掴んだ。
強く、逃げられないように。
「…え」
「…むかつくって、言ったんだよ!!」
「!」
「さっきから、自分で何でもかんでも決めつけやがって!!」
頭がぐちゃぐちゃだ。
さっきから1人で勝手に決めて、綾瀬綾瀬ってあいつの名前ばっかりで、俺の気持ちも勝手に決めつけて。
「ほんと腹立つ!!純のバカ!!」
「え、ちょ」
俺も立ち上がり、純を抱きしめた。
強く、逃げられないように。
まあ、俺の方が小さいから抱きついてるようにしか見えないけど。
「…俺が、嫌いになるわけ、ないじゃん…」
「…うん、ごめん」
「会わなくていいとか…勝手に決めるな」
「…うん、ありがとう」
「…別に」
…。
なんか、妙な空気が流れてきたぞ…?
「健志さ」
「?」
「ドキドキ、してる?」
…げ
「してない!!」
俺は純を突き放した。
心臓がうるさいの、バレた。
「わ!」
「帰る!!」
「え、なん…で…あ…」
腕を掴まれ、顔を見られた。
「…」
火照った顔を、見られたんだ。
いたたまれなくて走って外に出る。
「まって」
また、腕を掴まれた。
「また、来て」
「…」
腕から抜けようとしても、力が強くて逃げられない。
さっきとは逆だ。
俺の気持ち気づいたくせに、なんでそんなことするんだよ。
「次会う時までに…気持ちにケリつけるから…お願い」
「…また、くる…よ」
純はニコッとして手を離してくれ、俺は家をあとにする。
なんだよ、俺のこと好きじゃないくせに。
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