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朝、俺は8時15分に目が覚めた。
今日は一限はないからそんなにまずい時間ではない。
純はもう仕事に出かけたみたいだ。
机には朝ごはんと置き手紙が置いてある。
『また来て』とだけ書かれていた。
なんでだろう。
なんで俺にここまで親切にしてくれるんだろう。
ん?机の上にはもう1つあるものが置いてあった。
スマホ…おそらく純のだろう。
相変わらずおっちょこちょいなやつだな。
俺はすぐそのスマホを持ち部屋を飛び出した。
この時間ならまだうちを出たばかりだろう。
必死に駅の方に走る。
懐かしいな。
前よくこうして高志の忘れ物を届けるために走ったものだ。まあ高校生くらいからそういうことはほとんどなくなったけど。
前方に、見慣れないスーツ姿を見つけた。
それに追いつき、肩を叩く。
声をかけるのは、なんだか恥ずかしかった。
「…ん?」
「わ、忘れ物…」
「…わ!俺のスマホ!!健志ありがとう〜」
その時の純が
「ありがとうございます兄さん」
高志と重なった。
「…?健志?どした?もしもーし」
はっと、我に返る。
「…なんでもない。今回もありがとう」
「こちらこそ、また来てよ」
「…なんで」
「ん?」
純の目を真っ直ぐ見上げる。
「なんで、赤の他人の俺に…そんなに良くしてくれるの」
するとポンっと頭に手が乗っかった。
「ほっとけないから。健志は危なっかしいんだもん。それに」
「?」
「もう赤の他人じゃないじゃん。そんな寂しいこと言わないでよ」
ああ、この人はほんとに
「とにかく、また来てよ。待ってるから」
「…うん。テスト終わったら…また行く」
人がよすぎる。
何故か分からないが、顔を真っ直ぐ見れなかった。
「うん、よろしい」
ポンポンっと俺の頭を軽く撫で純は駅の方へ歩いていった。
走ってから随分たつのに、俺の心臓はいつまでもうるさいままだった。
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