オイラーの等式

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「…このiがなければこの方程式は成り立たない。つまり何が言いたいかと言うと」 数学教師…こと亀有 陸(かめあり りく)はこちらを振り返りこう言った。 「愛は美しいということだ」 自意識過剰かもしれない。 が、亀有先生とその瞬間目があった気がした。 ----------------------------- 亀有先生と俺の出会いは学校ではなく電車内だった。 入学式当日。 俺の最寄りは板橋駅で乗り換えの池袋駅までは1駅だけだが、大量の埼玉県民を乗せた埼京線の朝の混雑を甘く見てはいけなかった。 初めて体験する満員電車に悪戦苦闘する中、おしりに違和感を感じる。 ちょっと当たってしまったという感じではない。少し体の位置をずらしてもその手はついてきた。 これは確実に…。 嫌な汗をかく。最近は男も被害に合うなんてよく聞いてたけどまさか自分がなるとは。 『─まもなく池袋、池袋。お出口は─』 頼む、早くついてくれ。 その時。 俺より少し背の高いスーツ姿の男性が俺とその手の間にカバンを入れてくれた。 「こっちへ」 軽くパニクってた俺はいても立ってもいられずその男性の方へ体をずらす。
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