702人が本棚に入れています
本棚に追加
いざ心を決めると怖くなった。
しかも、いつもより遅い。
もしかしたら帰ってこないのかもしれない、それなら自分の部屋に戻って寝てしまえばいい。
気づかないフリをしてずっとここにいればいい。
そんなことを考えていたら
玄関からカチャリとなるべく音が小さくなるように気を使って開ける音がした。
竜也さんはいつだって、僕に気を使ってくれるいつだって僕を一番に考えてくれる。
だから、もしかしたら
彼女と別れて欲しいと泣いたりしたら
別れてくれるのかも知れない。
もちろん
そんなことを言える訳が無い。
竜也さんはリビングに入るなり
「まだ起きていたのか?」と声をかけてきた。
「あ、うん・・LEONっていう映画を見てたんだ」
「けっこう前の映画だよな」
「竜也さん見たことがあるの?」
「有名だし話題にもなってたから」
「じゃあ最後も知ってるんだ」
そういうと、不思議そうな顔で最後がどうしたんだ?たしか最後は
と、話し出したので慌てて話をさえぎって
「実は、途中で寝ちゃっていて最後は知らないんだ、でもハッピーエンドにはならなそうだから最後は知らないままにしようと思って、二人には幸せになってほしいから」
そういうと
「なるほど、そういう考え方もあるかもしれないな」そういってほほ笑んだ竜也さんの体からはほんのりと石鹸の香りがした。
気付かないフリをしてこのまま二人の生活を続けたいと思う気持ちが勝って
何も言えず立ちすくんでいる僕に
「そろそろ寝なさい」と声をかけてきた。
僕は「あの・・」と言いよどんでいると
どうした?何か話があるのか?と聞かれて
あせってしまって
「今日、一緒に寝ていい?昔みたいに」と口走っていた。
最初のコメントを投稿しよう!