第1話<京太の思い>

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「LEON」という、映画がテレビで放映されていたので見ていた。 一家を惨殺された少女がただ一人生き残り、アパートの隣室に住んでいる殺し屋に保護される。弟の仇をうつため殺し方を教わりつつも惹かれあっていくという話だ。 40歳の男が12歳の女の子に惹かれる、 それなら36歳の男が17歳を好きになることはあるだろうか? ただ、映画とは違って相手は17歳の男だけど そんなことをぼんやり考えていたら眠ってしまった。 二人はどうなったんだろう? とてもハッピーエンドになるとは思えないから、それなら最後は見なくてもいい気がした。 途中から夢で竜也さんとの出会いになったからこの映画はそういうことにしておこう。 竜也さんは親の居ない僕の保護者、後見人として僕が7歳の時から育ててくれた。 ずっと竜也さんと居るのが当たり前だと思って居たけど、よく考えたら父さんといとこだというだけなのに僕を育ててくれて、36歳になって未だ独身で贔屓目じゃなくても背も高くて男前だし結構給料も高そうだから仕事もできるんだと思う。 それなのに僕のせいで結婚もせず誰かと付き合って居る感じもなく、この部屋に誰かを呼ぶこともなく仕事が終わるとすぐ帰宅していた。 高校に入るまでは同じベッドで寝ていたのに、高校生になったのなら一人で寝るようにと僕に当てられていた部屋に僕一人用のベッドが入れられていた。 その頃から時々、夜が遅くなることがあって、先に寝てるように言われていたから特に気にせずにいたが、それが月に一度そして月に二度となったある日、たまたまトイレに起きた時竜也さんが帰ってきて竜也さんの体から石鹸の香りがしてることに気づいた。 いくらそういうことの経験のない僕だって何を意味してるのかわかる。 その日から、竜也さんが 「今夜は遅くなるから」 という日は何だかんだ言い訳をつけてリビングにいる。 うっすらと香る石鹸の香りを確認するのが怖いのに確認せずにはいられない。 本当は、来年の春には大学生になるのだから 竜也さんから離れないといけない、竜也さんの人生を戻してあげないといけないとわかっていても、僕の心の底に仕舞っている竜也さんを独り占めしたいと思う感情があふれ出てきそうになる。 それでもこの先、竜也さんの恋人がこの部屋にやって来て愛し合うことを考えると苦しい、 結婚したとしても竜也さんは僕を追い出したりしないから、だからこそ 辛い その辛さを味わいたくないなら竜也さんから離れた方がいいのかもしれない。 もし、 今日、 石鹸の香りがしたら 竜也さんの人生を竜也さんに返してあげよう。
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