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 親友Mとオレは、学校帰りに商店街をぶらぶら歩いていた。この夏、ひょんなことから、オレらはギターを弾き、曲を作りはじめた。 「この店も閉まってるね」と、M。  新型コロナウイルスパンデミックの夏の終わり、飲食店にも閉店したところが多い。活気のない、寂しい街になってしまっていた。  商店街にはライブハウスが1軒ある。オレらの憧れのその店にも、休業の張り紙。そして、ゴミ置き場にギターとベース、ストラトキャスターとプレシジョンが捨てられていた。  Mはため息をついた。 「なんか、悲しいな」  オレも、胸がきゅっとなった。 「おや、Mくん!」  ライブハウスのドアが開いて、店長(注 男性)が出てきた。Mの兄さんがバンドをしていて、この店でよくライブをしていた。なので、Mも常連ってわけ。 「お店、閉めちゃうんですか?」と、M。 「まあ、こんなご時世だからねぇ」 「店長はどうするんです?」 「いやいや、閉店するわけじゃないの。しばらくライブとか飲食系はしないだけ。コロナが落ち着くまで、知り合いの古着屋さんにお店を使ってもらうの」  Mはホッと胸をなで下ろす。 「よかったです。ここは、ぼくたちの憧れの場所ですから」 「そう言ってくれると嬉しいわぁ」
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