9人が本棚に入れています
本棚に追加
1
親友Mとオレは、学校帰りに商店街をぶらぶら歩いていた。この夏、ひょんなことから、オレらはギターを弾き、曲を作りはじめた。
「この店も閉まってるね」と、M。
新型コロナウイルスパンデミックの夏の終わり、飲食店にも閉店したところが多い。活気のない、寂しい街になってしまっていた。
商店街にはライブハウスが1軒ある。オレらの憧れのその店にも、休業の張り紙。そして、ゴミ置き場にギターとベース、ストラトキャスターとプレシジョンが捨てられていた。
Mはため息をついた。
「なんか、悲しいな」
オレも、胸がきゅっとなった。
「おや、Mくん!」
ライブハウスのドアが開いて、店長(注 男性)が出てきた。Mの兄さんがバンドをしていて、この店でよくライブをしていた。なので、Mも常連ってわけ。
「お店、閉めちゃうんですか?」と、M。
「まあ、こんなご時世だからねぇ」
「店長はどうするんです?」
「いやいや、閉店するわけじゃないの。しばらくライブとか飲食系はしないだけ。コロナが落ち着くまで、知り合いの古着屋さんにお店を使ってもらうの」
Mはホッと胸をなで下ろす。
「よかったです。ここは、ぼくたちの憧れの場所ですから」
「そう言ってくれると嬉しいわぁ」
最初のコメントを投稿しよう!