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私は今日から女子高生デビュー。まさに女子高生始めましたって感じ。
春の陽気、桜の花がキレイに咲いている。
「わあ、可愛い!」年配の女性が子犬を散歩させている。少し長めのリードで比較的自由なようで尻尾を振りながら私に近づいてくる。「よしよし、きゃあ!」子犬の頭を撫でると嬉しそうに飛び付いてきて私の口の周りをなめ回す。
「あんまり近づくと汚いわよ……」女性がリードを引っ張り子犬を私から引き離した。
「酷いな……大丈夫です。可愛いし……」私は精一杯の笑顔を返した。
「そう……、それじゃあ……」女性は子犬を連れてその場から離れていった。私的にはもう少しあの子犬と戯れたい気持ちであったが、入学式早々に遅れるのも何だから諦める事にした。
新しい制服のスカートが風に揺れる。通学途中の川の土手を心地よい春の風が漂う。
「うわー、綺麗な花」道端に小さな星のような形をした花が綺麗に咲いている。私はその花に自分の鼻を近づけた。なんだか密のような香りがした。「きゃ!!」その時、少し強い風が吹いて、私のスカートが舞い上がった。
「おい、見て見ろよ・・・・・・・」新入学生・・・・・・・、私と同じ年位の制服を着た男子がこちらを見て笑っている。私は恥ずかしくなって頬を染めたが、こちらを見るなという気持ちを込めてスカートの裾を強く抑えてから、少し厳しい表情を作って彼らを睨みつけた。「お、おい、行こう・・・・・・・ぜ」彼らはイソイソと姿を消した。私はその様子を見て軽くガッツポーズを取った。
なんだかテンションが高くなって軽くスキップで心を弾ませながら、学校に向かう。
「おい、君!」校門を潜ろうとすると警備員のおじさんに声をかけられる。
「な、なんですか?」私は訳も分からず首を傾げた。
「・・・・・・・どういうつもりだ!」
「どういうつもり?」私はおじさんの言葉の意味が解らなかった。
「いいからこっちへ来い!!」彼は私の制服の肩の部分を掴み引っ張った。
「な、なにをするの!女の子にこんな乱暴して!!誰か!誰か助けて!!」私の声は学校の校庭を響き渡ったが、誰も助けてくれる気配はなかった。
「うるさい!静かにしろ!!なにが女の子だ!お前のようなオッサンの女子高生がいるか!!」おじさんはもう少しで私の顔面を殴りそうな勢いであった。
こうして、私の女子校の入学式への潜入作戦はまたしても失敗したのであった。
終劇
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