忘却少年の日記帳

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 コンビニで戸籍謄本を手に入れて、二人はジュースを買って飲んでいた。真彩はエナジードリンク、翔太はいちごミルクだった。  これから結婚するんだという高揚感に真彩は鼻息を荒くしている。翔太はいちごミルクがただ美味しいというような緩みきった顔でいる。  その時、翔太のスマホが長く鳴動した。通話のようだ。 「もしもし……はい……」  通話相手の声を聞いた翔太は、ちらりと真彩の顔を伺った後、そそくさと距離をとった。  怪訝に思った真彩は構わず翔太に近づく。 「えっと……昨日、俺がそこに行ったって事? ああ、なるほど……わかりました。今からすぐに帰ります」  真彩が耳を澄ますと、通話相手はどうやら女性のようだった。  急いだ様子で電話を切った翔太に、真彩は詰め寄る。 「今の女誰よ? 昨日行ったって……やっぱり浮気してたんでしょ!」 「違う! けど……今ちょっと説明できない。急いで戻らないと」 「どうして? 今から婚姻届を出しに行くんでしょ。早くしないと私、三十路になっちゃう!」 「大丈夫だよ。まだ昼間だろ。受け取ってからでも遅くない」 「受け取るってどういうこと? その女から何を受け取るというの?」  翔太は意外にも悪戯っぽい笑みを浮かべた。……かわいい。 「ちょっとしたサプライズ。昨日の俺はまさか自分も驚くとは思ってなかっただろうけど」  翔太は素早く運転席に乗る。真彩はわけがわからなかったが、渋々助手席に座った。 いつも騙していた側だから、こういった立ち位置は慣れていない。 楽しみな気持ちよりも、仕返しをされるんじゃないかという不安ばかりが募るのだった。
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