最悪の出会い

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ホワイトのSUVパジェロに乗る前に花瓶の破片を落として、濡れた所を乾かせと言われてタオルを渡された。 頭を振って髪に残っていると思われる破片を振り払う。 「おかしいと思わなかったのか?」 自分もタオルでスーツの濡れている部分をふきながらナナに話しかけてきた。 「何が…?」 「売れ残りという立場。普通はその場で処分だ。さっきの声聞こえただろ」 言われてみれば自分は特にお仕着せの服を着せられることもなく、買い手がつかなくてもこうやって生かされている。 だが正直どうでもいい。誘拐された時から奴隷になる運命は決まっている。それが嫌なら逃げ切るしかなかった。 それも今さらだ。 「もう逃げるのはやめたのか?」 誰もいない地下駐車場で遠山がずっと話しかけてくる。 「…腕が痛い」 遠山が助手席のドアを開けた。 「折れてはいないと思うぞ」 シートベルトを締めながら運転席からそっと腕を取る。 反射的にナナは腕を引っ込めた。 「大丈夫そうだな」 怯えるナナに、やりすぎたと思ったのか遠山は苦笑した。 「さっきと態度違いすぎじゃないか。あんなに生意気だったのにどうした」 「マジ痛い…」 これからこの男にもて遊ばれるとわかっていて、楽しい気分になれるわけがない。 「正当防衛だったんだが」 何を考えているのか、遠山はなかなかエンジンをかけないままずっと話しかけてくる。 奴隷の自分に人権はないと諦めて、ナナは適当に頷いたりして相手をするしかなかった。 緊張と不安を抱えたまま遠山の顔を盗み見する。 その表情から何を考えているかわからないが、水に濡れて額にかかる前髪が初対面のときより優しそうに見えて、ナナはその感情にすがるしかなかった。 「乾かないな。帰ろう」 服が乾くのを待っていたのか。この時間の意味をようやく理解したが行き先を考えると気分は沈んだままだった。
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