悲鳴

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次に気がついた時は、誰も使っていないのか家具のない部屋。 和室のここに、布団を敷かれて寝かされていた。 耳を澄ますと明るい障子の向こうから遠山と知らない女性の話し声がする。 「工藤に頼まれて様子を見に来たんだけど、どうだった?」 若い女性の声。 「素人の子だから、まだ何とも」 どうやら話題は自分のことのようだった。 障子に映る影の女性は中世の西洋宮廷侍女のようなシルエットの服に、腰まで長い髪。遠山はこの前見た変わったデザインの服を着ているようだった。 どんな人なのか好奇心がわいたが、体を動かすといろんな所が痛い。 部屋を出るのは諦めて、横向きになって二人の影絵を見ていた。 痛みはあるが、マットレスにふかふかの布団が気持ちよくて眠くなってくる。 「処分した商品は海に沈めたから」 女性の声が急に小さくなる。 「俺にそんな話されても困る。それに死体にガスがたまってすぐ浮かぶぞ。雑な処分方法はやめろと言っておけ」 遠山の言葉に、自信があるのか女が不敵に笑った。 「次はどういうタイプの子がいい?」 自分のすぐそばで商談をしている。 遠山はもうナナに飽きたのか、男に慣れていない体が気に入らなかったのか。 これからあの土の中に埋められるのだろうか。 「無駄話はいい。それより医者は呼んだか?」 「もちろん。彼が目を覚ましたら診てもらえばいいでしょう?」 女性はそう言って音を立てずに障子を開けた。 「あら…」 起きているナナと目が合って彼女はにっこり笑う。 思っていたより若い。20代だろうか。その後ろに無表情な遠山が立っていた。 影で想像したとおり、ウエストを絞ったデザインの緑色のワンピースの女性が遠山を振り返った。 「呼んでくるわ」 待機させている医師を呼びに行ったんだろう、足音が遠のいていく。 ナナは大きくて柔らかいクッションに顔を埋めて、片目で遠山を見ていた。
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