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「主様!主様!大変です」 小さい少年が廊下をパタパタと必死に走っている。 突き当りの部屋の襖をスパンと開けた。 その部屋の奥には、煙管を加えた男が座っている。 「五月蠅いなあ、何」 男は不機嫌そうに少年を見た。少年はそれを物ともせず、息を整えてから言い放った。 「社の前にヒトが!」 * しんとした、冬の朝。 霜が降りた鳥居の前の石段に、誰かがちょこんと後ろ向きで座っている。 白い装束に身を包み、髪は鬟に結って頭の左右には鈴のついた赤い紐を結んでいる。 「...いつからいるのあれは」 「さあ、」 少年と男はひそひそと話す。 「おそらく麓の村の者でしょう。あの格好からすると多分...」 皆まで言うな、と男は手を振った。 「どうするおつもりですか」 「どうもこうも、追い出すよりほかはないだろ」 男は一歩踏み出す。 「...そこの」 しかしヒトは何の反応も示さない。
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