あの日出会った彼女が言うことには。

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彼女と会ったのは、俺が、20回目の就職面接の結果も不採用に終わって、自分自身に絶望し始めていた日の夜明け頃だった。 同じように内定が取れずにいる同級生数人と、夜通しやけ酒をあおっていて、酔いもいい感じに回っていた。 本当はもう少し飲んでいたかった。 けれど、財布の中身が無情にもほとんど空っぽになっていたので、仕方なく下宿先のアパートへ向かっていたのだ。 橋を渡る。 住宅街を縫うように流れる小さな川にかかっている橋だ。 いつもはわき目も降らずに渡り終えるのだが、その夜は、橋の半分ほどまで来たあたりで、ふと足を止めた。 酔って思考の鈍る頭に、川が流れる音が小さく聞こえてきた。 (なんかきれーな音だなー) 俺は欄干に手を乗せ、下に流れる川を見下ろした。 橋の前後に立つ街灯しか明かりがないので、川は暗い。よく見えない。 小さな川なのだが、両脇には岸があり、草がぼうぼうに生えていたはずだ。 (あーもうなんだかなー) 欄干に頬をくっつけると、冷たくて気持ちよかった。 飲み続けるお金もなく、就職先も決まらず、大学院に進むなんていう選択肢はそもそもなく、そしてこうして、暗い目で川を見下ろす大学生。 ふつふつと、現実が押し寄せてくる。 (面接20回受けて全部落ちるとか、俺、なに、社会に必要とされてないってこと?大人になるなってこと?ダメ人間ってこと?俺、学校のレポートも締め切りギリギリとはいえ落としたことないし、世間に睨まれるような悪いバイトにも手ぇ出してないし、標準レベルで生きてきたと思うんだけど。就職は運とか言うやつがいるけど、じゃあ俺、なんか不運に憑りつかれてるってこと?そんな証拠が出てきたら、ある意味うれしいっつーの) 首が痛くなってきたので、今度は額を欄干に押し付け、両腕は欄干の外に投げ出した。 「おやおやー、あっぶなーい体勢。落ちる気ですかー?」 「ああ?」
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