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「ねえ、僕のごはんと君のごはん、取りかえっこしない?」
ある日突然、やつは言った。俺はびっくりしたが、やつがいつも食べているものに興味があったので、二つ返事で了承した。
そして、口を付けようとしたその時、ものすごい勢いで首根っこを掴まれた。
「何モカのごはん横取りしてるの! 可哀そうでしょう」
怒鳴りつけられ叩かれた瞬間、何かが弾けた。
いい加減にしろ! 俺は唸り声を上げながらその手を引っ掻き、俺を抑える力が緩んだ瞬間、すかざず噛みついた。
「痛い! お母さん、マヤが噛んだ!」
その後、俺はケージの中に閉じ込められた。外では、人間たちが俺の方をちらちら見ながら何か話し込んでいる。
「何だかね、最近ピリピリしてるなとは思ってたんだけど……」
「モカにやきもち焼いてるんじゃない。愛想悪いのに、私が甘やかしてたから、自分が一番だって図に乗ってるんだよ」
「今までは、どうせ外に出さないし、他に飼う予定も無かったし、何よりお金が掛かるからと思って見送ってたけど……。やっぱり、キョセイしてあげた方がいいんだろうなあ。明日、病院へ連れて行こう」
結局、その日は一日ケージの外に出してもらえなかった。何となく不穏な雲行きを感じながらも、どうせ明日になれば出してもらえるだろう、とたかを括って眠りに就いた。
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