ランプの魔人

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 買うつもりは無かった。  だが、良き出会いと言うのは突然訪れるものだし、そうと感じた時には躊躇うべきではない。  とある店先で見かけたのは、実にアラビアンなランプであった。  カレールーの器かティーポットか、と二度見不可避なあれである。  こすると魔人が出てきそうなその器を、気付けば手に取っていた。  全体的に鈍い金色をしているが傷らしきものは無く、くすんだ見た目のわりに状態は良さそうだ。  使い込まれた様子もないので、ひょっとするとお土産的な奴かもしれない。  まあ、使い方なんてわからないんだけれど。  どのみち無用の長物であるには違いない。値札を見ると、それほど高価では無かった。  店主との交渉の結果、わずかながらの値引きに応じてくれたので買う事に決めた。  これぞ良き出会い。
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