ランプの魔人

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 帰宅してランプを前にしてみると、ある衝動がこみ上げてきた。 「こすってみようか……」  口に出してみると、何やら間抜けなように思えた。  もちろん、何も出てこないに決まっている。  そんな事は分かっているのだ。  だが、衝動には逆らえない。  ボタンがあると押したくなるのと同じだ。  心の赴くままに、鈍い金色の表面を布でこすり始めた。  こすってみると、くすんでいた表面が綺麗になっていくように感じた。  これはこれで意義のある作業だ。  気付けば、こするという行為に没頭していた。
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