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魔人は改めて一つ咳払いをした。
「で、もうお分かりと思いますが三つの願いを叶えますよという事です。最初のご主人様ですから、ここは大特価特別サービス。曲解は一切致しません」
特別サービスじゃ無ければするということか。
そう言われてみれば、曲解してとんでもないことを引き起こす、というのは定番のように思えた。
「それと、ちょっと待ってを一つに数えるのも止めときましょう。特別サービスですから」
「……その二つって特別じゃないとするの?」
「しますよ。そう言う仕様なんです」
それが仕様とは。
さすがは魔人の世界。
油断したら負けという事か。
「まあ、ちょっとした知恵比べみたいなところもありますからね」
「でも、今回はそれは無しなんだな?」
「そうです。始めたて記念セールです。完全にご主人様有利の三つの願いです。さあどうぞ」
ずずいっと、黄色い顔が近づいてくる。
何だかスパイシーな香りが漂っているような気がした。
完全にアラビアンな見た目のせいだ。
ともかく、人生で必要な物を願おう。せっかくのチャンスなのだからな。
「とりあえず……金が欲しい」
「金……えーと、ここは日本ですから……円ですね」
「その通りだ」
「……いくらほど御入用ですか?」
「えーと……」
ど、どうしよう。
いっそ何億、とか言いたいけどその金どうする?
急に大金を手に入れれば怪しまれるのは必至。
魔人がくれましたなんて言っても通用しないだろうしな。
それを使っても貯金してもダメだろう。
だからと言って、こんな安アパートに億単位の金なんか置いて置けるものか。
さらっと使いきれて、怪しまれずに済む金額……。
「百万円」
「百万円ですね。合点承知です」
「あー、今流通している貨幣で頼むよ?」
「もちのろんですご主人様。では、しばしお待ちを」
魔人はふいっと姿を消した。
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