ランプの魔人

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 そして、一時間ほど後の事。 「お待たせしましたご主人様」  戻ってきた魔人は床の上に重たげなものをぶちまけた。  驚いたことにそれらはすべて財布だった。  どれもこれもお高そうなブランド物の財布だ。  気になるのはどれもこれも使い込まれた感があると言うことだ。 「こ……これは?」 「え、金です。中に入っている金額を合わせると、ジャスト百万円です」  得意げな魔人の足元にある長財布を一つ拾い上げてみる。  なるほどずっしりと重たい。  怖いけれど確かめねばなるまい。  思い切って開けてみる。  中には確かにたくさんの諭吉さんがおられたが、同時に危なっかしいものまで入っていた。 「……免許証?」  好々爺っぽい爺さんが映っている。  もちろん見たこともないし、名前も知らない。 「まさか……」  俺は落ちている財布の中身を片端からチェックしていった。  どれも諭吉さんがたくさん入っている。  そして何らかの身分証明書も入っていた。  背筋に冷たい汗が流れまくった。こいつはヤバい。 「なあ、魔人? これ、どうやって持ってきた?」 「ああ、金持ってそうなジジババを後ろからエイッて」  ジェスチャー付きのエイッを見せられて、気が遠くなりそうだった。  完全に犯罪だ。 「冗談じゃない。奪ってきちゃダメだろ」 「え、だって無から円は作れませんよ? 万が一作れたとしても、それじゃただの偽造貨幣ですよ。犯罪です」 「後ろからエイってするのも犯罪なんだよ!!」 「……あ、そうか。いけねぇ。つい……。ここ、人間の世界でしたね」  魔人の倫理観がどうなっているのか詳しく知りたい。  通貨偽造はダメで、ノックアウト強盗は許されるのか? 「ついじゃない。戻してきてくれよこれ全部」 「えー、戻すんですか? 結構大変だったのに……」 「こんな金、使えるわけないだろ。良いから戻して来い。二つ目の願いで良いから」 「そんな事に願いを使われちゃうのもなぁ……。でもまあ、願いって言うなら仕方ないですね。行ってきます」  魔人は財布とともに再び姿を消した。  どうやらあの魔人、口ぶりは丁寧だけど相当危ない奴のようだ。  始めたばっかりだからか? そんなレベルだろうか。  自分を振り返った時、確かに人畜無害では無かった。学生時代には少しやんちゃな時期もあった。  鍵のついていない自転車を置き場から拝借したのがばれて警察にお世話にもなった事もある。  けど、強盗はしなかったなぁ。
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