お化け屋敷、はじめました

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 本当は電気をつけたい。けれどそんなに明るくなるようなほどの照明はつけてないし、その代わりに弱い光源がたくさんあるので今更つけると電気代がすごいから怒られるのだ。だからそこに向かうのに懐中電灯一本の明かりだけしかつけられない。  正直ホラーはそこまで得意じゃない。お化け屋敷もそこまで入りたいとは思わない。作るのは楽しかった。けれどわざわざ自分が作ったものの体験はしていない。  なんでこんなところを歩かなきゃいけないんだろう。そう考えているとそこについた。けれどその人はいない。さすがに帰ったのだろうか。  更衣室は事務室の隣だ。それならさっきのスタッフの話を聞いてすぐに来たのにすれ違っていないのはおかしい。  それに気づいた瞬間、何かが歪む感覚がした。  いや、僕が入ったのは事務室から近い出口側からだからきっと入口側から出たんだろう。まだ初日だからどっちが近いとか覚えてなかったんだろう。そう自分を納得させて踵を返す。と、何か変なにおいがした。これは知っているにおいだ。少し考えると線香のにおいだと気づいた。そんなものは用意していない。そう思ってあたりを見回す。懐中電灯の光は三十センチほど先で不自然な途切れ方をしていた。
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