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「それじゃあ、これから何しよっかー」
「ノープランかよ!」
ヘラヘラと笑う迅に無意識にツッコミを入れてしまう。
こいつは何においてもオンとオフの落差が激しい。
厳密にやる時はとことん抜かりがないくせに、適当な時はとことん大雑把だ。
いくら私服とはいえ、この4人組で街を歩いているとかなり目立つのだが、マイペースな彼らが気付くことはない。
そんな中、ふと目に留まったものに正嗣は「お」と足を止めた。
「じゃあさ、映画とかどうよ」
「映画…!」
真っ先に反応したのは彼方だ。
その目をキラキラさせる彼に、真志喜は「まさか…」と汗を流す。
「彼方さんって、もしかして映画館…」
「はい!行ったことないです!」
「「「……」」」
満面の笑みで答える彼方に、一同は哀れみの目を向ける。
彼方はかなりの方向音痴の為、旅行は愚か、遊びに出かけるという機会が滅多になかったらしい。
まぁそれは方向音痴の他にも、彼のほわほわした妖精オーラからなかなか友達が作れず、遊ぶ相手がいなかったこともあるのだが。
「よし、行こう!彼方さんの思い出を増やそう!」
「そうだね。初めての経験をいっぱいさせてあげよう」
「彼方、他にも行きたいとこがあったら遠慮なく言えよな!」
「は、はいっ。ありがとございます!」
そんな会話をしながら、迅は昔のことを思い出す。
真志喜は幼少時代、治安の悪い地域で育ち酷く貧しい暮らしをしていたこともあり、一般的なものに触れる機会がなかった。
なので常識的なことを何を知らずにいたこともあり、よく色々な場所で色々な物を見せたものだ。
後ろをひょこひょこついて来る真志喜はこの上なく愛おしかった。
ギュッと手を握ってきて、決して離れまいとする様子に胸が締め付けられたのを覚えている。
真志喜にはあの時俺だけしかいなかったから。
離れてしまえば、また暗闇に引き戻されると思っていたのかもしれない。
そんな真志喜を、なんとしてでも守りたかったし、いつまでも側にいたいと思った。

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