2438人が本棚に入れています
本棚に追加
「……ごめん……なさい」
「何に謝ってるの?」
「……ここで泣くのはフェアじゃない」
「あははは! それならここで離そうとしない俺もずるいから、ちょうどいいんじゃない?」
後藤さんが笑うと、こっちまでその振動が伝わってくる。抱き締められていると、こちらはどうしていいかわからず、じっとしていた。
「そろそろ、認めたら?」
「何をよ……」
「嫉妬してたって。ほら、可愛いやきもちだよ。認めて。ね?」
恥ずかしいし、情けないし。
「もう! ……でも、そうだと思う。そうです」
彼の胸の中で、言葉はくぐもってしまったけれど、あの感情は自分を見失うくらいの嫉妬だ。
「女子ってさ、元カノの存在気にするくせに、この年の男が経験なかったら引くよね。矛盾してない?」
「そ! それは女子とか関係ないから! 個人差じゃない? 男子でも気にする人は気にするから!」
からかう後藤さんにまたムキになって顔を上げて言い返してしまった。
優しい目が細められ、何度も躊躇した私とは逆に
「うん、俺も。俺も気にした」
全く躊躇することもなく、はっきりとそう言った。それに私は驚いて、動けなくなった。後藤さんが気にした?何を?私は元彼となんて別れて以来会っていない。
「前の会社辞めて転職したのって、前の恋人と別れたから?」
私から視線を外してそう訊いた。
最初のコメントを投稿しよう!