第21話

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「前の会社じゃ、自分の成長も見込めなかったし、30代でマンション()を買うのが目標だったから、お給料のいいところに転職したかったの。ほんと、ラッキーだった」 「……うん、ラッキーだったな。そっか、向こうの会社にいる時から城は買うつもりだったのか」 「……そう。どうして元彼なんて気にしたの、今さら」 「『もっと相手とちゃんと話せてたら違ったかな』って、言ってただろ。後悔するくらい未練があるのかと、思ったんだ。もし、話し合っていたら……向こうが変われば続けたい関係だったのかと、思ったんだよ」 「へえ、可愛いやきもちですね」 「……おい、あのなあ」 変わったかもしれない。だけど、話し合いをしてまで続けたいと思えなかったことが今の結果だ。後藤さんは最初からちゃんと私の意見を聞いてくれた。そこが違いだと思う。 「……あ、でも……私は後藤さん生活して快適だったけど、後藤さんはしんどかったんじゃない? 後藤さんの方がいっぱいしてくれてたし、損してない?」 「損得勘定で、文乃と住んでるわけじゃない……二人でいたいんだ。だからさあ、いい加減俺に落ちてくれない?」 落ちてるよ、とっくに。この家でするって決めた時から。いえ、もう少し……前からかもしれない。
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