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「前の会社じゃ、自分の成長も見込めなかったし、30代でマンションを買うのが目標だったから、お給料のいいところに転職したかったの。ほんと、ラッキーだった」
「……うん、ラッキーだったな。そっか、向こうの会社にいる時から城は買うつもりだったのか」
「……そう。どうして元彼なんて気にしたの、今さら」
「『もっと相手とちゃんと話せてたら違ったかな』って、言ってただろ。後悔するくらい未練があるのかと、思ったんだ。もし、話し合っていたら……向こうが変われば続けたい関係だったのかと、思ったんだよ」
「へえ、可愛いやきもちですね」
「……おい、あのなあ」
変わったかもしれない。だけど、話し合いをしてまで続けたいと思えなかったことが今の結果だ。後藤さんは最初からちゃんと私の意見を聞いてくれた。そこが違いだと思う。
「……あ、でも……私は後藤さん生活して快適だったけど、後藤さんはしんどかったんじゃない? 後藤さんの方がいっぱいしてくれてたし、損してない?」
「損得勘定で、文乃と住んでるわけじゃない……二人でいたいんだ。だからさあ、いい加減俺に落ちてくれない?」
落ちてるよ、とっくに。この家で二人暮らしするって決めた時から。いえ、もう少し……前からかもしれない。
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