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「…………いや、それは……」
歯切れの悪い後藤さんに、不審に思う。てか、いつまで離してくれないんだろう。身を捩ってみたけれど後藤さんの腕は全然緩まなかった。
「何?」
「……中島さんが、結婚したら性欲強すぎるのしんどいって……言ってたからさ。一緒に住んでたら結婚してるのとかわらないだろ?
負担に思ってたらヤだなっ……て 」
ヤだなって!言い方が可愛くて吹き出してしまう。あの時中島さんの話を聞いて複雑そうな顔してたの、そうだったのか。
「バカ」
「まあね、いいね、すぐに『バカ』って言ってくれる距離感」
「そろそろ離してって」
「あと5分」
「3分」
「6分」
「増えた!」
「あははは!」
私からもぎゅうぎゅう抱きついて、子供みたいだって笑い合った。
「あ、でも『結婚してるのとかわらない』って言っちゃったけど、全然違う。してるのと、してないの、全くかわるからな。この件はまたゆっくり話す。一先ず今は……」
ようやく身体が離されたと思ったら、ごくごく至近距離で目が合う。何度も角度を変えて落とされたキスはすごく幸せであたたかいものだった。こんな気持ちになるのは……
「ねえ、これって……運命なのかな?」
キスの合間に問う。
「さあ……どうだろう」
後藤さんがいたずらっぽく笑った。私もつられて笑う。
「運命か偶然かわからないけど、一つ提案があるんだ」
彼がリビングから走らせた視線を追う。引き戸のある、その場所。
「今日から、共有スペースを広げないか?」
私を片腕で抱いたまま、その場所へ移動すると引き戸を開いた。
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