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──数ヶ月後
2つの報告を受けることになった。
1つは香田さんから
「無事に結婚出来ることになりました」
拍手が起こる中、香田さんが恥ずかしそうに笑った。
「人生でこんなに頑張ったの初めてです」
「……お前なあ、職場で言うなよ」
安藤さんがそう言って
「や、もちろん、仕事は! 仕事を除いてってことで」
「はは、いや、おめでとう。仕事はねえ、頑張って貰わないとね、一人……抜けるから」
そこで皆の視線が一点に集まった。事前に聞いていたので、みんなわかっていることだった。
「あー、えっとー、まだもうちょっとこっちにいますけど、皆さんお世話になりました。札幌支店に着いたら、美味しいものでも送ります」
そう言ったのは、安藤さんだ。小篠さんがとっても寂しそうだ。
「ちゃんと引き継ぎして下さいね」
「はい」
部署には新卒が数人入ってくるが、安藤さんの穴埋めはしばらくベテランたちに任されそうだ。
安藤さんは自ら異動願いを出して、時期を見て受理された。堀越さんの小樽への転勤で遠距離になるからと別れたが、よりが戻ったらしい。
堀越さんを追いかけて行くことを決めたって。私は意外だと思ったけれど、後藤さんは安藤さんらしいなあって笑った。
──
去り際、
「何も貫かなきゃならないわけじゃないしね、今は、独身主義。俺も片瀬さんも。ね? これからどうするかは、相手次第。後藤と仲良くね」
と、耳打ちされた。カフェで話したセリフ……。それに、それに……気付いてたの!?
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